185・別府 照湯温泉
温泉
施設外観。相当に歴史の古い温泉だが、施設そのものはリニューアルされていてそれなりに小奇麗な感じ。
成分分析表
成分的にはかなり薄い部類に入る単純泉だが、実はこの成分表にはある秘密があった。
概要
立地的には別府の本家坊主地獄からやや坂を上った先にある照湯温泉。更に上れば明礬温泉があり、お湯に硫黄の気配が漂うエリアでもある。
照湯温泉の歴史は古く、湯屋には今治より元々の地主であったとされる方から送られた鬼瓦が掲示してある。
江戸時代から続く湯治場であった照湯温泉だが、今の湯屋は元の場所とは少し違うらしく、温泉の状況もだいぶ異なっているようである。
というのも、今の照湯温泉は所謂「人工造成泉」に該当するのだ。
如何に豊富な湯量を誇る別府と言えども、あちこちで源泉の掘削が行われるとやがて湯枯れを起こすというのは必然。
実はこの兆候は直ぐ下にある坊主地獄でも見受けられるようになっていた。
このコポコポと泡を噴く鉱泥は年々数を減らし、自然の鉱泥噴口は数を減らし続けていたのである。
しかしながら活火山である鶴見岳を擁するこのエリアは地熱だけは豊富。お湯は出なくなってもこのように蒸気だけはバンバン噴き出してくる・・・。
だったらこの蒸気を使えば良いじゃない!!
こうして作られたのが人工造成泉。
強大な大地の加重圧でお湯に成分を溶存させる通常の温泉と違い、人工的にお湯に蒸気を通して作られる人工造成泉では成分が薄くなるのは必然。それ故の単純泉。蒸気に含まれた硫化水素の影響で若干の酸性を示すが、所詮はまがい物・・・。
否、人工物といって侮ってはいけない。
日本全国でも人工造成泉を提供する温浴施設は非常に数が少ない。国内であれば箱根の大涌谷温泉が有名であるが、とにかく数が少ない。噴気と水が確保できる環境で初めて製造が可能となる人工造成泉はそれはそれでレアリティの高い温泉の一つなのである。
そして、蒸気に含まれた温泉由来の成分は、別の形でその特徴が湯中に現れるのである。
総評
別名、殿様の湯。
通気によって温泉にされた成分は湯中には殆ど解ける事はないが、不溶性の成分としてお湯の中には現れる。スペック上は単純泉ながら、微かに白濁りしたお湯はまるで硫黄泉のそれ。香りも硫化水素臭あり。
この温泉中には造成工程によって生じた湯の花由来のコロイド粒子が浮遊しており、白くも青くも見えるという独特の色調を呈している。
塩分は殆ど溶存していないので舐めても塩味は無い。むしろ微かに甘い。
蒸気で充分に加温された源泉は90℃以上の激熱であり、微量注入によって源泉掛け流しが維持されている。最初だけ水で埋めるのであろう。
湯に浸かれば微かに硫化水素の臭いが鼻につく。鉄や土のような香りは無い。お湯を観察すると、なるほど、やはり箱根大涌谷温泉と同じ白い粒子状の浮遊物が散見され、どうやらこのコロイド粒子は硫黄噴気由来の人工造成泉では共通の特徴になるらしい。明礬温泉や紺屋地獄でも似たような風呂があった事を思い出す。
自然湧出した温泉とは少し趣が異なるが、人工造成泉というのは温泉として決して悪い物ではない。むしろ、世界的にも稀有な施設なのだと思うと、これはこれで貴重な温泉の一つなのは間違いない。元々熱いお湯なので結構ガッツリ温まるし、湯屋は風通しが良く、ゆったりと休みながら浸かる事が出来る。
あまり混雑しないという点も含めて、個人的には高評価として推す。
美食
今回は飲食が無く、割愛する。