温泉美食倶楽部活動報告書

温泉の成分分析表に興味ある人向け

番外編・温泉考「温泉はセブンセンシズを目覚めさせコスモを極限まで高める」

1.成分分析表が語る泉質は極一部

この温泉ブログは基本的には成分分析表を載せて、お湯の写真を撮り、分析表から予測しうる性質を実際の入浴体験と併せて淡々と評価していくスタンスで書いております。

過去の記事を読んでもらえれば分かりますが、成分分析表のデータからその温泉の特徴を言い当てる事はかなり難しく、実際には成分分析表には乗らない様々な要素が温泉の個性を決めていることが分かります。

所詮、成分分析表は採取時点でのデータでしかないし、そもそもこの評価項目に乗らない様々な成分が温泉には含まれている。

 

例えば、同じ泉質、同じpHでも浴感がツルツルした湯もあれば、もっとトロミのあるヌルヌルした湯もあるし、ねっちょりと肌に張り付く湯もあれば逆にサラリと肌に絡まない湯もあるわけです。

その原因は液中の炭酸水素イオン量だったり、腐植質(モール成分)だったり、不溶性の粘土質成分だったりするわけです。

 

成分分析表はあくまでその中の標準的な評価項目の一覧に過ぎず、これは飲泉に適しているかどうかを判断する要素の一つでもあります。当然飲泉許可が下りる温泉は非常に審査が厳格で、有毒なヒ素や重金属等がないかをみっちりと調べられるというわけです。そのため、ほとんどの場合、保健所は飲泉の許可を出しません。

 

まーこの辺は温泉の浴感とはほぼ無関係の項目なわけで、そういった意味でも成分分析表のスペックが浴感と乖離しているのは当然と言えば当然なわけですな。

 

2.総合的浴感を決めているのは地質と・・・?

コスモの力ですよ。(大嘘)

複雑な色や臭いは地質以外にも環境面の影響もある。

 

温泉の知覚的評価項目としては、即ち

・視覚的・・・透明度、屈折率、色・濁り等

・嗅覚的・・・匂い(硫化水素臭、アンモニア臭、土の匂い、金気臭、ガス加温の匂い、塩素消毒の匂い等)

・触覚的・・・ヌルヌル・ツルツル・スベスベ・ネッチョリ等

・味覚的・・・しょっぱい、甘い、酸っぱい、渋い、エグ味、鉄の味等

などが挙げられます。流石に聴覚的&第六感やセブンセンシズな分別はできそうにないので、こんなものでしょう。

 

ひとえに温泉といっても硫化水素臭だけじゃないというのは、大きなポイントです。

そもそも硫化水素を含んでない温泉でも、硫酸イオンなどを含んでいれば、排水管に住む微生物によって硫化水素の匂いを発したりしますからね。伊豆の熱川温泉などはまさにそれでした。(下水から硫化水素臭が発生し、観光客がそれを温泉の匂いと錯覚しているパターン)すごーい!温泉(下水)のにおいするねー!

 

つまり、真なる温泉の浴感と特性を知るには、実は多くの教養と知識が必要というわけです。

 

まー温泉は日本人にとって最も身近な娯楽の一つなので、ねー気持ち良かったねー!でも全然かまいませんけど、知識と教養を得る事でよりディープに知る事ができるようになりますが、気軽さを失わないこともある意味大事な要素です。

 

3.スペック厨にならないために

温泉を学び始めたころの私はまさにこのスペック厨でした。いや、今もまだ修行中だからそういうところはあるにはあるけども、温泉を知る上で本質的に大事なことは、そうした知識面も含めて、温泉全体の特徴を身体と頭を使って「感じる」事です。

 

温泉は1度入っただけで全てが分かるものではありません。メンテナンス直後の湯質が変わったり、大雨後の泉質が変わったりという事も多々あるわけで、日々その状態が変化し続けています。突然枯れる事もあるわけで・・・。

 

しかし遠方地の温泉はそう何度も入りに行けるものでもないですので、それ故にたった一度の入浴感覚を大事にする事が重要です。入浴前の洗体に使ったボディソープの匂いの影響とかも考えながら、この湯が自分に何を語りかけてくるのか・・・?

 

何度か顔に湯を浴びせ、匂いを嗅ぎなおします。檜風呂ならば浴槽の匂いはあるのか?建物の匂いはあるのか?外に置かれたボイラーの匂いは?古い配管であれば藻の類が付着した匂いはあるか?アルカリ性泉の場合では皮脂の量でヌルヌル感が変わるため、入浴前に洗い落とした影響が出ていないか?何度も皮膚になじませて注意深く観察するわけです。

 

温泉は科学でありますから、考察も交えながら入浴します。

皮膚からの熱伝導性も考慮します。浸透圧、塩分濃度、皮膚脂肪酸への陽イオンの付着度合い、浴後の発汗量、熱放散性、それら全てが入浴体験というわけです。

温泉の効能は基本的には温熱効果ですが、成分の他、様々な環境要因による副次的な効果も考えます。温泉地で食べる美食もまた温泉の一部であり、子宝の湯と呼ばれる遠因ともなっていると考えられます。昔は食が偏りがちだったからね。

 

そうなると、今度はその温泉の由緒や歴史についても考えるようになってくるわけです。まーそういう意味で、温泉は娯楽でもあり、総合学習とも言えるわけですな。

 

スペック厨はある意味で一部の知識を高め過ぎた事による視野狭窄の類ですから、広く浅く位で良いのかもしれません。

 

皆さんも、教養を高めて良い温泉ライフを。