温泉

施設外観。こちらは宿泊棟でございます。
成分分析表

39.5℃のぬる湯モール泉。
成分そのものはなんて事は無いのだが、ここはかなり特殊な条件が揃った温泉なのだ。

内湯のみ加温で、露天風呂は完全掛け流しである。
概要

前回の森の湯も近くにあったが、どうも湯布院と日出生台を挟んで北西の山側にモール泉が出ているのではないかと推測。街道沿いだった玖珠市内や水分峠などは透明な単純泉が出ている事を考えると、道沿いの河川が泉質の秘密になっているような気もします。河川があるという事は水の通り道という事でもあるので、どういった経緯で河川が生じたのかも調べたら面白いかもしれない。

七福温泉は耶馬渓近くにある温泉で、国道387号線沿いにはこのようにマジヤバ系な奇岩の数々を見る事が出来た。

航空写真で見るとわかるが、七福温泉は国道から谷を下りて行った先みたいなところにある。

道中こんな感じで木が伐採されていて、下りもかなり急な勾配があった。

谷を下った先にあるのがここで、右手が宿泊棟。中央奥が温泉棟となる。
貸切湯もあり、宿泊棟で受付をする仕組みとなっている。
中央やや左にあるのはオープンデッキな休憩スペース。

宿泊棟の奥にはこのように釣り堀が用意されていて、意外にアクティビティに富んだ場所となっている。

敷地内には何故か孔雀が飼育されており・・・

アヒルが放し飼いにされていて、自由に川に出たり入ったりしているというほのぼの環境。実は子連れで来ても楽しめる場所なんではないかと思ってみたり。
川には絶滅危惧種ともいうべきカジカガエルが生息しており、その美しい鳴き声を聞く事も出来る。

そそり立つ奇岩の麓にあるボケ封じ地蔵尊。何だか色々とネタを捩じ込んだみたいな面白環境に、地味に笑みがこぼれる。

露天風呂からも見える奇岩の数々は、秘境感を増していて実に趣深い。

ボケ封じに若返る水かぁ・・・。(老化)
完全に飲用可の低硬度湧水であり、ゴキュゴキュ飲める軟水。
ちなみにこの水は湧出量も豊富らしく、水風呂としても提供されている。
温泉とは別に水風呂も湧くとか、もうここ色々チートでしょ。
総評

まずは内湯。光の加減で真っ黒に見えるが、浴槽の底が見える程度の透明度はある。
温度は41℃位に加温されており、そこまで熱くは感じない。
肌触りはツルツルで、熱伝導性が低いためか、意外に長湯できる浴感である。

アングル変えてもう1枚。ほらね、底は見える程度の透明度はある。
しかしはっきりとモール泉と判る茶色を呈しており、森の湯ほどのアブラ臭はないが、しっかりと熟成した土の香りはする。

こちらが露天風呂の様子。こっちは完全に加温なしの掛け流しであり、36~37℃前後くらいの温度になっている。山奥の露天風呂であるため、かなり虫が寄ってくる環境ではあるのだが、この温泉はモール泉特有の有機物に由来する高い粘度=とろみがあり、羽虫たちにとってはかなり相性が悪い模様。
そういった特性からか、通常では水を弾く羽を持つ虫が、液面に接触した瞬間チーンとお陀仏しているので、最初は湯を堪能する前に洗面器で念入りに虫取りに従事する必要があった。別名「トリモチの湯」と名付けたい。

そしてこの温泉の異質さを象徴しているのが、このモール泉特有の粘度ともいえる。
上記の写真に写っているのは源泉から生じた微細な泡であり、成分的に全てが炭酸ガス成分という訳でもないらしいのだが、こうした気泡がとろみのあるお湯の中に魚卵のように漂い、なかなか液面に現れて来ず、安易に揮発しないという特性を持っているのである。

こちらは湯出口の様子で、ここでももちろん炭酸水素イオン由来と思われる気泡が見てはとれるのだが、七里田温泉や長湯温泉のような通常の炭酸泉であれば、ここでパチパチと大量の泡がはじけているのが普通なのに、この温泉に限っては、泡そのものが空をに浮かぶ雲のように液中を漂い、かなり離れたところでパチパチと弾けているのである。
えぇ・・・どういうこと?これマジで炭酸泉じゃないの?

成分分析表を改めてみてみると、確かにこの温泉には殆ど炭酸ガス成分は含まれていない事が判る。しかし液中には無数の気泡が生じており、炭酸ガスが出ないとするとそれはただの空気の泡という事になるのだが、それが何処で生じたのかといえば、やはり湧出口でお湯が注がれた瞬間に生じたものであろう。もちろん、317mg/kg程度の炭酸水素イオンを含んでいる事を考えると、それが気泡の原因になっている可能性も充分考えられるが、浴感として炭酸泉特有の強烈に血管が開く効果は感じれなかったので、恐らくこの七福温泉は、炭酸水素イオン由来の気泡+モール泉特有の成分と粘性が生じさせた自然気泡が豊富な温泉という事になるだろう。
この泡立ちの秘密にはもう一つ、39℃という奇跡的な源泉温度も関係している。というのも、加温した内湯では一切の気泡が生じていなかった事から、あと少しでも温度が高かったら、このような気泡は形成されなかった可能性があるのである。冒頭でも記した通り、この温泉はかなり特殊な条件が揃った上で生じた気泡泉なのだ。
37℃程度のぬる湯に身を任せて頭まで全身をぷかりと浮かべると、湯中で泡の弾けるシュワシュワという音が聴こえてきて、なんともスピリチュアルな経験をする事ができた。

余談ではあるが、温泉の温熱効果を確かめる上で、水風呂はかなり良い試験方法となる。七福温泉の場合、塩類泉の様な高い温熱効果はなく、どちらかというと血管の弛緩作用の方が強いと感じた。即ち、長湯しても水風呂入ると身体が一気に冷えちゃうという事である。泡立ちによる皮脂洗浄性と、pHも8とアルカリ性である事から、やはりどちらかというと冷涼感を楽しむ、身体を冷やす系の温泉なのではないかと考える。
美食

今回は宿泊で利用したので、旅館メシである。
七福温泉では雉料理をウリにしており、脂の少ない上品な赤みを、炭火で炙りながら頂ける。大分県らしく柚子胡椒付きの鳥のタタキも完備されていて、やはり麦焼酎が異常に合う。写真には載ってないが、山菜の天婦羅も付きます。今ならタラの芽とフキノトウね。

〆には雉蕎麦?も出てきて、もうご満悦必至の晩飯でしたよ。
水も美味いので、基本的に料理が全般的に美味しくなるよね。

朝はこんな感じ。こういうので良いんだよ定食。
和食 is 最高。やっぱ日本人の朝飯はこうじゃないと。
近頃ではコロナ禍で来日できない外国人も多いと思うが、日本には素晴らしい温泉があり、しかも浴後にこんな旨い飯が食える国に産まれてよかったと、心からそう思うね。