温泉美食倶楽部活動報告書

温泉の成分分析表に興味ある人向け

番外編・温泉の泉質と効能についての考察と検証

仮の職業薬剤師として、温泉の効能を漢方の効果に準えて陰陽で捉えてみる事にした。

効能に関しては諸説あるだろうが、一応科学的な根拠と実際の入浴体験からまとめてある。

分かりやすいように身体を温めるなど、陽の効果は赤、身体を冷やすなど、陰の効果は青で記載した。

 

1.温泉の泉質

こういうのは温泉ソムリエや温泉保養士など各種テキストに記載されているので、興味ある方はそちらの方を受講してもらえると手っ取り早いわけですが、一応ここでも簡単に分類を記載しておきます。

 

1-A.泉温による分類

鉱泉・・・25℃未満       交感神経優位

低温泉・・・25℃以上34℃未満  交感神経優位

中温泉・・・34℃以上42℃未満  副交感神経優位

高温泉・・・42℃以上       交感神経優位

 

1-B.液性による分類

酸性泉・・・・・pH3未満        身体を温める陽の効果

弱酸性泉・・・・pH3以上6未満     身体を温める陽の効果

中性泉・・・・・pH6以上7.5未満

アルカリ性泉・pH7.5以上8.5未満 身体を冷やす陰の効果

アルカリ性泉・・pH8.5以上      身体を冷やす陰の効果

 

1-C.浸透圧による分類

低張泉・・・成分総計8000mg/kg未満  身体に水が入り込む保湿効果

等張泉・・・成分総計8000mg/kg以上10000mg/kg未満

高張泉・・・成分総計10000mg/kg以上 身体から水が抜ける脱水効果

 

1-D.液性による分類

 

1-D-1.単純泉・・・成分総計1000mg/kg未満の温泉(低負担・低温熱)

 

1-D-2.塩類泉

 A.塩化物泉・・・主たる陰イオンを塩素イオン(Cl⁻)が占める塩類泉

 B.炭酸水素塩泉・主たる陰イオンを炭酸水素イオン(HCO3⁻)が占める塩類

 C.硫酸塩泉・・・主たる陰イオンが硫酸イオン(SO4₂⁻)が占める塩類泉

 

1-D-3.特殊成分泉

 A.二酸化炭素泉・・・炭酸ガスとして1000mg/kg以上含有

 B.鉄泉    ・・・総鉄として20mg/kg以上含有

 C.酸性泉   ・・・水素イオンを1mg/kg以上含有(pH3未満)

 D.ヨウ素泉  ・・・ヨウ素イオンを10mg/kg以上含有

 E.硫黄泉   ・・・総硫黄(硫化水素ガスも含む)として2mg/kg以上含有

 F.放射能泉  ・・・Rn(ラドン)として8.25マッヘ(111Bq以上)

 

2.温泉の効能

温熱効果→温泉の温度による効果

○当然の事ながら温度が高い温泉ほど温まりが早く、また湯冷めしにくくなる。

○低温、高温域では身体への負担が大きくなる。

※ここでの最大のポイントは、約37℃~40℃周辺では副交感神経が優位に働き、それ以外の温度域では交感神経が優位に働くという点だ。要するに、上記の温度域以外は身体への負担が大きいと云う事を意味する。

 

液性効果→温泉の液性(酸性度・アルカリ性)による効果

○酸性が強くなるほど皮膚表面では軽度の炎症が起きやすくなり、温熱効果が高まると同時に肉体への負担も高くなる。軽度炎症はしばらく続くので、湯冷めはしにくくなる。

○逆に液性がアルカリに寄るほど皮膚の洗浄力は高くなるが、温熱効果は長湯する程高まるものの、皮脂が落ちる為に浴後の湯冷めがしやすくなる。

 

物理効果→温泉の比重(重さ・浸透圧)による効果

○重い湯(浸透圧の高い湯)ほど皮膚を抑えつける圧は高くなり、身体にかかる負担は大きくなるが、高張泉ほど多くの塩分を含むために保温効果は高まり、湯冷めしにくくなる。

○軽い湯(浸透圧の低い湯)の多くは単純泉であり、身体を抑えつける圧は低く肉体への負担は軽くなるが、同時に浴後の保温効果は低くなる。湯冷めしやすい。

 

成分効果→温泉の個別成分による効果

○塩類泉ではNa、Caなど陽イオンが豊富なほど皮膚のコーティング効果が高くなり、表面張力は低下して温熱効果は高まり、湯冷めしにくくなる。

 

○塩化物泉よりも硫酸塩泉は若干保湿効果が高い。

 

○塩類泉でも炭酸水素イオンが豊富な温泉は血管拡張作用が高くなり、身体を温める効果は高くなるものの、一方で浴後は身体の熱が奪われやすくなる。

 

二酸化炭素ガスを含んだ温泉は血管拡張作用が高まり、身体を温める効果は高くなるものの、浴後の身体の熱は奪われやすくなる。(湯冷めしやすくなる)

 

○鉄泉は温熱効果が高く、保熱効果も高いため湯冷めしにくい。一方で他の塩類泉に比べると負担が大きい。

 

○酸性泉は液性の欄で記載済みの通り、温熱効果も保熱効果も高い。湯冷めしにくい。

 

ヨウ素泉は知られてない効果が多く、謎。

 

○硫黄泉は温熱効果・保湿効果のほか、尿酸などの排毒作用があるがその分身体への負担が大きい。湯冷めしにくい一方で、とても湯あたりしやすい。

 

放射能泉は身体への負担が非常に大きい反面、α線を浴びる事で様々な面でホルミシス効果が高いと推測される。湯あたりもしやすいが、鉱泉である場合も多いので温熱効果・保温効果に関しては入り方次第。

 

○成分分析表には載らない事が多いが、アブラ系モール泉は浴後に有機物が皮膚を覆うため、浴後の保温効果が非常に高い。

 

3.実際の効能評価

これに関しては実際には行ってみるまで分からない。

だが、温泉のスペックたる成分分析表からは色々な事が判る。

 

○サンプルその1

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冷える温泉の代表はこないだ記事を書いたオソウシ温泉だ。

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ここの温泉で判った事は、アルカリ性の液性により皮脂の洗い流された身体は、浴後にとても冷えやすくなる一方で、その身体が皮脂を補完すべく発汗が著しく亢進するという点である。

 

○サンプルその2

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強烈な酸性硫黄泉である蔵王温泉。泉温も高く、浴後は非常に湯疲れする。

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相応量の炭酸ガスも含むが、それ以上に温熱効果の方が高い。

 

○サンプルその3

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長万部温泉は若干濃い目だがほぼ等張泉。しかしアブラ系のモールが豊富で、酸や硫黄は無くとも充分保温効果が高く、その臭気からも湯あたりしやすい湯に位置する。

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長万部温泉は炭酸水素イオンも豊富な部類に入るが、これほどの源泉温度と濃度になると、弱アルカリの冷やす液性よりも温熱効果が高く出ていると云える。

 

以上のように、温泉のスペックとは非常に多軸に渡る。

それぞれの温泉の効能はそれらの評価軸をいくつかに重ね合わせて総合的に評価する必要があると云えるだろう。