温泉美食倶楽部活動報告書

温泉の成分分析表に興味ある人向け

12・西桔梗温泉

温泉

f:id:sticknumber31:20160726221343j:plain

建物内の源泉掲示

 

成分分析書

f:id:sticknumber31:20160726221548j:plain

ナトリウム・カルシウムー塩化物泉

 

概要

西桔梗温泉函館市内の外れ、北美原と桔梗地区の境目の農用地にポツンと存在している渡島地方最強のカルト系温泉である。

 

そもそも函館市が湯の川以外に数々の泉質の温泉を抱えた別府並の一大温泉地だという認識を持っている人は少ない。というか、当たり前のように温泉があるために、地元函館市民にもその特異さが全く周知されてないのである。

 

西桔梗温泉は市の外環を走る産業道路の外れにある農地にポツンとあるため、函館市民からも殆ど馴染みのない温泉である。見た目と中の設備のボロさも相まって、一度訪れた市民でもリピーターになるものは少なく、北海道の中でも怪しさ満点の超一流カルト温泉としての資質を秘めている。

入湯料もアホみたいに安く、300円台だった気がする。

 

総評

ナビ上では「西ききょう温泉グランド」などとスーパー銭湯チックな名前でヒットするのだが、建屋のボロさは折り紙付きで、中の浴室にはシャワーなどなく、浴槽に至ってはコンクリート製の土管という、マニアにとっては役満級の高得点を叩き出す設備となっている。

 

しかし、薬剤師免許を持つ温泉マニアとしてどうしても押さえておきたいのが、この温泉の持つ特異な泉質である。

 

成分総計で10.65g/kgというその濃さも海が近いこの地域にしては珍しい高張泉であるが、その成分のばらつきにも注目してもらいたい。

主たる成分であるナトリウム・塩化物イオンの他、1000mgを超える炭酸水素イオンと500mgを超える遊離炭酸ガスは、この湯がかなり強力な血管拡張作用を持つ炭酸泉であることが判るし、800mg以上の硫酸イオンはそれだけでも温泉の王様と評される硫酸塩泉としての資質を充分に秘めた泉質も兼ね備えている。

 

これらの成分に加えて、通常測定されない事が多いカリウムイオンの豊富さと、特筆すべきはフッ素、臭素ヨウ素といったハロゲンイオンがぼちぼちの量測定されている点である。他にも、鉛、ヒ素、アルミニウム、亜鉛など、およそ飲泉には適さないような微量な元素も幅広く測定されており、如何とも形容しがたい、混沌とした泉質を持つ温泉なのである。

一体地下に何があるんだ・・・?

 

お湯の色は透明な茶褐色のモール泉(?)であり、実際にその色が化石植物による有機物の色なのか、微量に溶けた金属イオンによるものの色なのかは正直わからんが、多分匂いから判断して化石植物による色なんだと思います。

 

pHは弱酸性であり、肌を荒らすような湯ではないと感じたが、髪の毛を洗うのには少々成分がキツ過ぎる湯のようである。

なんせ生理食塩水よりも濃いお湯なので、一般的には重く、疲れる湯だと思っておくとよいだろう。

 

浴槽は前述の通りコンクリート製の土管であるが、内湯に3か所、露天に3か所と小分けにしてあるところが面白い。内湯も露天も温度で分かれており、露天風呂には1か所水風呂代わりのような地下水で薄められた冷たい浴槽もあった。長湯するのに冷たい湯は非常にありがたいので、シャワーがないのは残念だが、ここはポイント高い。

 

もちろん、加温循環などという金のかかる設備は一切ないので、カランの湯も浴槽の湯も全て、源泉と水だけである。

 

見た目のカルトさ以上に泉質のカルトさが際立つこの西桔梗温泉は、北海道でもトップクラスのマニア向け温泉である事は間違いないだろう。

 

美食

f:id:sticknumber31:20160726225532j:plain

五稜郭にある炭火割烹・菊川で食べた、大間サザエである。

津軽海峡を挟んだ函館では、北海道らしいツブ貝の他、青森県側の海域からサザエが入ることもあるのだそうで・・・。

注:いつでも食べれるわけではありません。

 

海水の綺麗な大間のサザエは、身の香りも露骨に磯臭くなくて上品であり、かつ綺麗な海藻を食べて育ったサザエのワタが非常に美味い一品であった。

 

伊豆界隈でもサザエは好んで食べていたが、つぼ焼きならともかく、ワタまで刺身で出してくれるところは少なく、食べれたとしても臭みの方が強くてあまり美味いと感じたことはなかった。海水の差はサザエのエサの差に直結しているのかなー?とも感じた一品でした。

 

冷酒は地元函館米を青森で仕込んだというガスバリをお勧めする。安くて美味い。

https://www.facebook.com/sumibikikukawa/

11・祝梅温泉

温泉

f:id:sticknumber31:20160725230740j:plain

建屋入口

 

成分分析書(簡易)

f:id:sticknumber31:20160725231347j:plain

ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉

 

概要

祝梅温泉は千歳市内にあるボロ屋系(廃墟系?)の温泉である。

温泉マニアの間では定評のある温泉のようで、是非一度入ってみたいと思っていた温泉だ。

千歳市街のはずれ、陸上自衛隊の駐屯地の直ぐ傍にあるこの温泉は、初めて行ったときはカーナビでも少々道に迷った。「祝梅温泉」と書かれた倒れた巨大なボーリングのピンが目印で、そこの未舗装路を入っていくと間もなく上記の写真のような建物が見えてくる。

民家のようであるが、一応ちゃんと営業している日帰り入浴施設である。

 

総評

温泉マニアとしてはその建物が醸し出す雰囲気は申し分のない評価を与えたくなるところだが、一般的な感覚では入るのに躊躇してしまうような施設であろう。

 

泉質は上記の通りナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉である。色も褐色のモール泉であるが、実はこの褐色の炭酸水素塩泉自体は、札幌界隈の日帰り入浴施設でもよく見受けられるものであり、別段珍しいものではない。

詳細な成分分析表を見つけることはできなかったが、恐らく月寒界隈の温泉とはそれほど泉質は変わらないモノと思われる。新千歳空港内の温泉(千歳市内からの引き湯)にも似ている。

 

その黒い湯は石狩平野の成り立ち、豊富に含まれた炭酸水素(重曹)からしてみても、確かに太古の昔から、ここには豊富な有機物(植物)があった事を感じさせる泉質なのである。

 

浴室の造りはシンプルなもので、3つか4つほどの洗い場と内湯があるだけの簡単な構造。

 

常連のおっさんがいたので話を聞くと、やはり他の札幌界隈のモール泉同様に、源泉は冷たいのだそうだ。源泉自体はこの建物の直ぐ近くから引いているらしいが、一旦アツアツに加温してから浴室に注がれてくる。

 

実はこの時、なんと湯を張りたての一番風呂に入ったわけであるが、源泉は近隣の建物で(恐らく薪か何かで)50℃位に加温されてから浴槽に注がれているため、祝梅温泉では常連のおっさんが最初に水でしっかりと埋めてから入浴に適した温度にしているのである。

 

源泉100%の一番風呂はとてもじゃないが熱くて入れた代物ではなかった。それなりに浴槽内を水で薄めてからどうにか入ったのだが、それでも炭酸水素の豊富なアルカリ泉だけあって、ツルツル感のある肌触りをしていた。どの程度の炭酸水素が溶けているのかは不明だったが、それなりに血管拡張作用もあったように感じる。

 

余談であるが、この一番風呂の常連のおっさんはここの源泉をペットボトルに入れて持ち帰り、飲用しているそうである。

おっさんは笑って健康の秘訣と話していたが、化石植物も溶けているし、成分的には飲用には適さない泉質であろう。ま、そこは自己責任ってことで。

 

私個人の主観としては、祝梅温泉はお湯そのものの珍しさはそれほどでもないが、カルト的な魅力・天地効果のある温泉といった評価である。

 

美食

f:id:sticknumber31:20160725235620j:plain

初心者は飛行機に乗らずとも新千歳空港に行くべし。

新千歳空港は上記のようなシースーから、海鮮丼、ジンギスカンスープカレー、各種有名ラーメン店の他、ロイズの出来立ての生チョコから温泉、映画館、なんとアニメイトまで揃う一大テーマパークである。

 

私はこの空港は学生の頃から何度も足を運んでいるが、行く度にその規模はデカくなり、もう札幌まで出なくてもよくね?ってレベルの観光施設と化している。

 

実際にありとあらゆるお土産もそろうし、マジで札幌まで出なくても充分北海道を堪能できる空間になっているので、羽田から祝梅温泉に入りに来るだけでも、帰りの時間をたっぷりここで過ごせば、ちゃんと北海道旅行を完結できるのである。

 

他県の空港も見習って、どうぞ。

www.new-chitose-airport.jp

10・100円温泉

温泉

f:id:sticknumber31:20160612231056j:plain

建屋全景

 

成分分析書

詳細非掲示につき未確認・アルカリ性単純泉

 

概要

「入りたきゃ勝手に入れよ!」とでも言わんとしているようなスタイルで、マニアの中でも特に人気の高い黒石市追子野木にある100円温泉。その名の通り100円で入浴できる温泉で、地元の建築会社が福利厚生施設として所有しているモノらしい。

 

写真の通り、ボロいプレハブ小屋なので、管理者は常駐しておらず、基本的に善意の100円で運営されている温泉である。客層は地元の老人が主であるが、不届き者もいるらしく、県外からの入浴者は脱衣所の窃盗注意。

 

総評

泉質はアルカリ性の透明な単純泉であるが、色は茶色がかったモール泉であり、某ブログでは「硫黄の匂い」と記している人がいたが、独特の匂いは硫化水素ではなく化石植物の有機物臭である。

 

源泉は入浴に適した42℃であり、加温も加水も必要ない事から、極太のパイプから源泉がそのまま浴槽にドバドバと直接注がれているのが実に見ていて心地がいい。

 

単純泉ながらアルカリ性がやや強く、非常にヌルヌルとした肌触りが特徴の良泉である。前述の新屋温泉もヌルヌル系だったが、青森県は地質的にもパッツパツの酸性泉から、このようなヌルヌル系アルカリ性泉まで、色んな種類の湯が湧いているので奥が深い。

 

浴後は結構な汗をかいたが、それほど疲れる湯ではないと思う。地元のニーズに非常に合っている湯ではないだろうか。

 

見た目のボロさと裏腹に浴場は小奇麗にまとまっており、広さこそないものの、それほど不衛生な印象は受けなかった。

 

メインの客層は高齢者の方が多く、閉鎖的な土地柄でもあるが故に、地元民が入っている際は入浴時のマナーに関しても細心の注意を払った方がよいであろう。あとは前述の通り貴重品の管理に注意である。

 

美食

黒石市とは関係ないが、このあと青森市内に向かう途中に五所川原に寄ってエビ臭いつけ麺を食べた。

f:id:sticknumber31:20160612235257j:plain

麺屋・幡というお店だそうで、複合商業施設・エルムの街の近くにあります。

www.banryu-chuka.com

あ、これも美食というかジャンクですね…。

9・三内温泉

温泉f:id:sticknumber31:20160611202419j:plain

施設全景

 

成分分析書

f:id:sticknumber31:20160611202648j:plain

 

概要

温泉といえば白い湯・・・というイメージを持つ方も多いでしょうが、白い硫黄泉というのは大体が人里離れた山奥の方にあって、なかなか市街地からはアクセスが難しいところにしかない・・・というのは温泉マニアの間でも定説でありますが、イチイチ泉質の優れた湯の湧く青森県では、なんと市内に白い湯の湧く温泉があります。

しかも新青森駅の近くで、三内丸山遺跡のすぐ傍。

その名も三内温泉である。

 

さんないヘルスセンターとかいう近代的な名前の割に酷く時の流れを感じさせる草臥れたこの温泉施設は、市内から車で約10分という立地でありながら、裏手に墓地が広がっている事もあってか、かなりのカルト感を醸し出しており、マニア向けの温泉である事はまず間違いない。

 

利用者の殆どはやはり地元民であったが、青森市民である私の友人はその存在すら知らなかった。

 

総評

建物に入る前からまず最初に感じるのが、この強い硫化水素臭である。

 

それもそのはずで、溶存硫化水素イオンで16.3mg/kg、ガス成分としても5.7mg/kgもの硫黄分が溶けており、これらの両者は併せて2mg/kg以上あれば硫黄泉を名乗れるのであるからして、実に基準値の20倍近い濃さの硫化水素が溶けている温泉なのである。

 

濃い硫黄泉に浸ったあと、数日は服や身体に温泉の匂いが残った経験をした事はないだろうか?硫化水素はそれくらい体内への浸透性が高く、温泉成分の中でも特に薬理効果が高い成分として知られている。

 

硫黄原子というのは細胞内外各所にそれ自身と同時に水分子を引き込む作用を持っているため、この湯の特徴としては高い保湿効果と同時に、細胞レベルでの強い身体的な負担がある湯である事は間違いない。

 

また、それに加えて成分総計は12628mg/kgと、三内温泉は非常に濃い温泉である。主にナトリウムイオンと塩素イオンがその大半を占める塩化物泉であるが、これだけ濃いと生理食塩水の約1.25倍の重さがあり、静水圧としても身体に強い圧がかかっていると同時に、硫黄の保湿効果以上に、浸透圧により体中から水分が抜ける方が優位になっている事を忘れてはならないだろう。

 

pHこそ7.5とほぼ中性であるが、泉温は46℃もあり、成分上は含硫黄の高張性・高温泉であり、簡単に言えばこの三内温泉は、「強く・重く・熱い湯」でなのである。

 

さて、浴場の評価であるが、泉温も非常に高く、加水する必要がない事から、ドバドバと掛け流しされているのは大変すばらしいものの、成分の濃すぎる湯ほどメンテナンスには大変苦労するものであり、ここもその維持には大変苦労されているようである。

 

浴室の壁はその濃い硫黄分が作り出した大量の白い湯の花や、硫化鉄?なのか黒く染まっている部分もあり、浴槽内には草津の湯畑で見たような感じの謎の藻が生えていたりと、お世辞にも綺麗な浴場とは言い難い雰囲気を醸し出していた。

 

正直な話、衛生面的にちょっと不安の残る印象の浴場であったが、おおよそ微生物が快適に増殖できるような泉質ではないのだろうし、毎日湯の交換はして掃除もしているのだろうから、ま、多少はね?といった所なのだろう。

 

少なくとも、上級者向けの温泉である事は間違いない。

 

美食

三内丸山遺跡付近はとりわけ飲食街があるような所ではないのだが、近くにある新青森駅の1階フロアは土産売り場として非常に大規模で積極的な展開をしており、一人の旅人として、買い物が楽しくなるような、非常に好感が持てる空間となっている。

 

お土産の他にも飲食をする場もしっかりとあるため、駅弁を買って電車内で食うもよし、電車が来るまで海鮮丼や寿司を食うのもよし、旅の終わりにも有意義な時間を過ごす事ができるだろう。

 

せっかくの開通記念日にクッソ小規模の土産屋と弁当屋しか用意できなかった新函館北斗駅は悔い改めて、どうぞ。

 

www.jre-abc.com

8・新屋温泉

温泉f:id:sticknumber31:20160611102419j:plain

成分分析書

展示なしにつき撮影できず

 

概要

恐るべきは北の温泉県・青森県。何気ない町中にとんでもなく良質の温泉がそこかしこに湧いているのが特徴的であるが、ここ平川市新屋にある新屋温泉はその特異な泉質に、個性が特に際立っている。

 

見た目は入り組んだ住宅街の奥にぽつりとある銭湯であるが、みどりの湯を標榜するこの温泉は豊富な硫黄と独特のアブラ臭を持つマニア涎垂モノの温泉なのである。

 

地元民以外は狙って来なきゃまず来ない、新屋温泉はそんな町中の秘湯なのである。

 

総評

成分分析書を撮れなかったので、各種サイトで調べてみての総評になるが、とにかく強いアブラ臭と鮮やかなミドリ色が目を引く不思議な温泉である。

 

成分総計は約1000mg/kgをちょっと超える程度の成分らしい。液性はpH8~9の弱アルカリ性。濃い硫黄成分が入浴時に強烈なヌルヌル感を演出している。

源泉は入浴に適した適温であり、40℃少々との事。冬場は加温しているかもしれない。

浴室はシンプルな中央堀型の浴槽で、周囲にカランが配置されている。

 

私が入った時は鮮やかで透明感のある緑色だったが、日によっては濁って見えることもあるようだ。

 

地元青森の友人と一緒に行った温泉であったが、仕事の疲れが溜まっていたのか、それとも豊富な硫黄分が身体にきつすぎたのか、翌日にその友人は体調を崩してしまったので、温泉としてとても強い湯であることは間違いなさそうである。

 

美食

美食というかジャンクですが、

f:id:sticknumber31:20160611110349j:plain

近隣の黒石市といえば黒石焼そばが有名なようです。

 

特別美食かと言われれば別段そうでもないような気もしますが、すぐ近くには古い酒蔵「鳴海酒造」もありますので、そちらの方を手土産に、古い町並みを散策してみるのはいかがだろうか。

www.applet1181.jp

 

7・湯の澤鉱泉

温泉

f:id:sticknumber31:20160611091921j:plain

写真は施設入り口。

日本秘湯を守る会の提灯が見受けられる。

 

成分分析書

f:id:sticknumber31:20160611092234j:plain

 

概要

茨城県はあまり温泉県のイメージがないのだが、街道沿いに湯治場や温泉宿場として栄えた町が乏しいというだけの事であり、探せば古くから地元民に愛されてきた温泉はポツポツと散見される。

 

この湯の澤鉱泉茨城県常陸大宮の山中にひっそりと佇む一軒宿であり、日本秘湯を守る会の提灯が象徴するように、冷鉱泉ながら自噴源泉がかけ流し(加温)されている宿である。

 

市街地からそれほど離れてはいないが、カーナビ通りに道中を進んでいくと、それなりに険しい道に入り込むので、妙な冒険心をそそられる秘湯である。首都圏からのバイクツーリングであればちょうどよい場所にあるのではないだろうか。

 

総評

泉温15.5℃、湧出量毎分24Lと、その資源の細さも気になるが、成分総計550mg/kgと単純泉であり、炭酸水素イオンが330mgとかなり惜しいラインを行っているが、現行の温泉法上では温泉に該当しないものと思われる。

 

言い方を変えればこの湯の澤鉱泉の湯は事実上の「湧水」であり、湧水を沸かして浸かっている、と考えると何だか釈然としない感を受けるかもしれないが、あくまで「鉱泉」を名乗っているので、それはそれで何ら問題はないのであろう。

 

㏗8.2と、酸性度としてもほぼ中性に近い弱アルカリ性で、ますます湧水感が溢れるスペックとなっている。

加温しているので、唯一の豊富な成分である炭酸水素イオンもいくらかは分解してしまっているのかと思うとなんだかもったいない感じがする。源泉の水風呂なんかがあればよいのだが、自然湧水で、かけ流しを維持するには湧出量も少なく、仕方のない事なのだろう。

 

ここまでネガティブな総評が続いているが、浴室全体が木造でいい感じの落ち着いた造りであり、自然湧出のノンフロー源泉であることから、湯の活き・・・水の透明度や香りもフレッシュであり、成分が少ない故に単純泉らしい肌触りもなかなかに良かった。

何より、険しい山林の奥にひっそりと佇む宿の雰囲気は、日常の喧騒を忘れるに充分な風情があり、転地効果を楽しむという意味ではまずまずの施設なのではないだろうか。

 

美食

ここに来たのは大洗でのフェリー待ちの時間を使うという目的であったので、実質茨城での美食は大洗で摂っている。

ガルパンでおなじみになった大洗の名産といえばあんこう鍋であるが、

この時季節はちょうど12月、私が食べた料理で最もおいしかったのは・・・

f:id:sticknumber31:20160611100246j:plain

〆鯖である。

写真は大洗港周辺にある「居酒屋しゅんさい」の〆鯖であるが、季節が良かったのか、トロリとして身が柔らかく、程よい酢締めで非常に美味しかった。

日本酒が入る入る入る入る・・・入っちゃった。とまんね。

 

日本酒といえば函館の日本酒イベントで大洗の月の井酒造さんから特別純米酒を頂く機会がありまして、その節は大変美味しかったです!とお礼を述べておきたい。

特別純米 月の井 (1.8L) / 月の井ショップ

 

ちなみに日本酒は使用する湧水が命らしいので、飲用も浴用もできる茨城県には湧水に一定の評価を与えても良いのではないだろうか?

6・禰宜之畑温泉

f:id:sticknumber31:20160523223218j:plain

温泉

写真は町営やまびこ荘の浴槽

西伊豆町営やまびこ荘 温泉分析書

成分分析表

 

概要

西伊豆の海沿いの国道から県道59号(伊東西伊豆線)を進むと、仁科峠の手前に大沢里という小さな集落がある。禰宜之畑温泉はここの旧小学校の敷地内に湧く温泉で、現在は廃校となったこの小学校は「やまびこ荘」と名を変え、町営の宿泊施設として伊豆内外から多くの人々に親しまれている。

 

熱い湯が多く湧く伊豆の中にあって、源泉温度にして39℃という絶妙な湯温を誇るここの温泉は、伊豆の他のどの温泉地にもない癒しを提供してくれる湯として、かなり希少価値が高い事は云うまでもない。

 

そのぬる湯の温度は絶妙で、冬こそ加温が必要であるものの、夏場はその豊富な湯量もあってか、全く加水も加温もすることなく湧いたまま浴槽に注がれ続けており、その湯の高い鮮度を感じながらもさして熱くはないので、長く入っていられるというのが最大の魅力の一つであろう。

 

総評

39℃の中温泉にして、主たるイオンは陽イオンにしてカルシウム>ナトリウム、陰イオンにして硫酸イオンという典型的な石膏泉である。

 

カルシウムイオンが豊富なため、水道蛇口付近には白い結晶が大量に付着しており、湯の味も塩味は低く、硫酸塩特有のエグ味があるのが特徴。飲泉は可否は不明だが、もしも飲泉が可能であれば、その硫酸イオンの豊富さから便秘によく効く湯となるであろう。

 

pHは8.9とそこそこにアルカリ性であるが、カルシウム分が濃いためかヌルヌル・ツルツルとした肌触りはなく、むしろ陽イオンが効いた突っ張る感じの湯である。成分総計も1758mg/kgとそれほど重い湯ではないが、静水圧的には長湯するにはちょうど良い重さであるともいえる。

 

この温泉はやまびこ荘の他に配湯している施設がほとんどない事から、湧きだした湯をそのまま掛け流して使用している。そのため湯の活きが良く、長湯するにしてもいつまでも湯が新鮮で、非常に心地よく長湯できるのが特徴である。

 

成分的には低張泉であるが故に、水分は細胞膜を通って身体に吸収される傾向があるが、豊富な硫酸イオンは特に保湿効果も高いので、長湯でしっかりと温泉を身体に吸収した後は、浴後直ぐにオイルなどでコーティングなどをするとなお美容にも良いと思われる。

 

中温泉で長湯になるだけに、浴後は炭酸泉に入った後のような心地よいけだるさが身体中を包む。血管の継続的な拡張が予測されるため、風呂上りに薄着でウロウロするとたちまち体調を崩してしまうので注意が必要である。

 

美食

西伊豆の温泉であるので、食そのものは西伊豆町内で海産物を食べるのが良い。禰宜之畑温泉にも民宿があるので、そこで泊まって腕をふるってもらうの良いだろう。

しかし敢えて禰宜之畑温泉の何某かをアピールするならば、伊豆の湧水を美食の1つとして推したい。

 

やまびこ荘からほどなく山奥に進むと、「わさびの駅」という小さな道の駅的な施設があるのだが、ここの最大の売りはわさびではなく「天城深層水・健」である。

 

適度にカルシウムと硫酸イオンを含んだ水は、なるほど禰宜之畑温泉のルーツを感じさせる中硬度の水であり、天城の山奥で風呂上りに飲む湧き水ってのも、なかなか乙なものでもあります。

 

風呂上がりに県道59号を抜ける際には必ず目にする施設なので、この道を通過する際は是非立ち寄ってみるとよいだろう。