28・東鳴子温泉・高友旅館の湯
温泉
鄙びた古い湯治宿であり、いくつかの源泉がある。
ひょうたん型の浴槽が特徴的な玉の湯。純重曹泉。
墨のように黒い、黒湯(幸の湯)。こちらは硫黄を含んだ重曹泉である。
他にももう二種の源泉があったが、この時はメンテ中に付き入れず。
しかし泉質的には上記二種と近い。
成分分析書
少し見づらいが、玉の湯。
これは黒湯(幸の湯)
確かに硫黄の含量が異なる。ベースが重曹泉なのは同じ。
概要
西の別府に東の鳴子って言い方があるそうですが、別府温泉ほどの規模はないモノの、鳴子温泉のお湯の種類の豊富さは目を見張るものがあります。
今回紹介するのはその中でも鳴子御殿湯近くにある高友旅館です。
数ある鳴子の源泉の中でも、ここは重曹泉・・・即ち、炭酸水素イオンがメインのモール泉であり、温泉マニアが唸る「油臭」のする湯が湧く事でも有名です。
その浴感は強烈な腐植成分が肌をコーティングするかのようにねっとりとした肌触りであり、そして浴後は化学薬品のような独特の有機物臭が残るのが特徴です。
↑ひょうたん風呂は浴槽で若干茶色く濁ったモール色が見受けられるが、注ぎ口を見る限りではほぼ透明だった。
↑黒湯はその名の通り黒い。硫化水素が微量の鉄と反応しているのだろうか。
↑析出部位ではさらに顕著な黒さに。この固まり方はまるで鍾乳石のようである。
この旅館を利用するに当たっては、観光でキャッキャッという宿ではない事を念頭に入れておいてもらいたいです。建物全体は非常に古く、湯の価値が解る人向けの静かな湯治宿です。
↑座敷牢のような門がある客間
↑年季を感じさせるマッサージチェアと遊具。
イメージは掴めたかな?
総評
温泉のガチっぷりで言うと全国でもかなり上位に入る高友旅館の湯。
いずれも重曹成分がメインの温泉であり、あまり陽イオンが目立たない。個性を出しているのが腐植質(モール)と硫黄(硫化水素)と重曹の三つである。
ミネラルの主張はと言うと、析出した黒い結晶位だろうか?味もしょっぱくもないし、ナトリウム塩化物泉を彷彿させる要素がない。
この中でキーとなる成分は腐植質(モール質)と硫化(硫化水素)であろう。
モール質の優劣に関しては言及を避けた方が良いのだろうが、関東蒲田界隈の黒湯や北海道の十勝川温泉等と比べても濃い(強い?)ように感じる。
いや、色は真っ黒ではなくてひょうたん風呂で薄い茶褐色、黒湯でも若干白濁の混じった灰黒色なので、実際の腐植質の濃さはコーヒーのような色をした真っ黒な蒲田界隈の温泉と比べるとそうでもないのかもしれないが、溶け込んだ硫化水素がこの腐植質に特別な浴感を持たせているのではないかと推測される。
即ち、前述の通りねっとりと肌に張り付くような浴感があり、他の重曹泉と違って肌にサラッとした感じが全くなく、まるで粘土のように肌に纏わりつくような肌触りなのが特徴なのである。
しかも、匂いが異様に試薬臭い。何の試薬かは例えようがないけども、とにかく、風呂上がりの肌からは薬品のような化学的な匂いがプンプンと漂うのである。
硫黄が入っているのに硫黄の匂いがあまりしない辺りも実に興味深い。
この湯の硫化水素はガス状だけではなく、液中に充分溶けた溶存型としても存在しているからなのであろう。湧出部位で透明であり、浴槽に注がれてから湯が灰色に濁るので、モール泉と溶存型の硫化水素泉が混じった風呂なのではなかろうか?
モール質が無ければ、恐らく鮮やかな緑色~白濁だったかもしれませんね・・・。
入浴の効能としては、重曹泉らしく浴後の血管拡張作用もバッチリでした。
また、肌に張り付くような液性があるので、これも保温効果として強い効果を発揮しているように思います。
ともかく、他に類を見ないとても珍しい湯でした。
マニア度高し。
美食
鳴子の温泉街で食べた鴨うーめん。
ちょいと酒を入れた後の〆に、これがまた美味いんですよ・・。
鳴子温泉の滝の湯の近くに、年季の入った居酒屋がありましてね、そこで食べれます。
(店の名前は忘れた)