温泉美食倶楽部活動報告書

温泉の成分分析表に興味ある人向け

138・寿都温泉ゆべつのゆ

温泉

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施設写真撮り忘れた。代わりに簡易スペック表。

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何とここは2つの源泉を持っている。

 

成分分析表

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これは美肌の湯の方の成分ですね。カルシウムメインの塩類泉だが、イオン型の硫化水素が含まれている事に注目。従って、肌触りがツルツル系。

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より深く掘ってあるこちらの源泉は、その分地熱が高い。泉質も硫化水素が消えて強力な塩類泉となり、よりガツンとキマる湯に。

 

概要

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じゅ・・・寿都って何処だよ問題。札幌と函館の中間?にしては日本海側にあるので、まぁ遠い。それでも、最近できた後志道のお陰で大分近くなりました。

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寿都港は道の駅とも併設になっているので、立ち寄るには良い場所。しかしそもそもアクセスが悪いので、今でも狙ってくる人しか来てないでしょう。積丹半島からも大分距離ありますからね。

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これは実際に使われていたニシン漁の舟らしいんですが、江差から北上してきたニシン漁師の子孫が住んでいると思われます。寿都は道内でもなかなか有名な漁港で、ニシンの他にもホッケやシラス、牡蠣の養殖もやっていてなかなか海産物が上手い所で有名です。

 

総評

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まず脱衣所で気になったこの教授の話。

「身体の疲れをとる力(還元力)」とあるが、いわゆる酸化還元電位(ORP)の事だと思われる。最近、温泉業界の中でもこのORPを泉質指標としてアピールにする動きがあるのは知っていたが、身体の疲れを取る事とは無関係です。(断言)

この学会の活動、ちょっとAM菌っぽいエセ科学な傾向があるんだよなぁ・・・。

 

ORPはいわゆる、お湯の鮮度の指標だと思って下さい。電子の放出のしやすさ、受け取りやすさを表す指標であるので、ORP値の高い湯は、そのままお湯そのものが曝気による酸化(劣化)を受けやすい(逆に言えば還元力が高い)という事を意味しています。地表から出る前の温泉に含まれる原子は、地面の圧などによって地表とは異なる平衡状態にありますから、湧出してその圧を逃れた原子は、地表の気圧や空気中の酸素などによって酸化され、地表下での平衡状態に落ち着く事になるのです。

これを「お湯の草臥れ」と私は称していますが、要は生魚を外に置いとくと段々劣化するよ、ってのと似たようなもんだと思って下さい。

 

この劣化(草臥れ)は急速に進行しますので、源泉の貯蔵環境や源泉から浴槽までの距離、循環等の影響によって大きく変化します。仮に湯に還元力があったとしても、人間はそれをお湯に浸かる事=経皮的にしか恩恵を得る事は出来ませんので、体内深部に発生した活性酸素の除去などにはほぼ影響しない訳です。当然、疲れの物質である乳酸が消える筈もないです。疲れを取るという点では、まだTCAサイクルを回すビタミンを含んだリポDアリナミンを飲む方が説得力があります。それどころか、こんな強力な塩類泉ですから、むしろお湯慣れしてない人に対しては得も言われぬ疲労を感じさせるはずです。

 

皆さんも安易なニセ化学に騙されないように。

お湯そのものが悪いわけではありません。

要は、入り方、使い方、宣伝の仕方の問題です。

 

使い方という意味で云えば、この温泉は湯の鮮度が良い事は確かです。

湯の使い方に関しても、それを活かそうというこだわりが随所に見られました。

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この図からも判るように、水道水の浴槽は塩素殺菌を行い、温泉の浴槽には紫外線による殺菌と、殺菌方法を使い分けていますね。紫外線殺菌だと塩素消毒の様な匂いはないから、その辺もこだわりだと思います。紫外線って、塩素と比べて殺菌力はどうなんか知らんけど・・・。

 

あと、内湯の美肌の湯、癒しの湯はそれぞれ掛け流し浴槽を個別に用意しています。湯は各浴槽それぞれ舐めてみましたが、恐らく露天や循環浴槽は2種の温泉を混ぜて使ってますね。(塩気で癒しの湯が混じっている事が直ぐに判る)

硫化水素泉である美肌の湯は微かに青みがかった透明な湯で、濃い塩類泉である癒しの湯は濁りのある薄茶色の湯でした。見た目でもすぐにわかりますが、美肌の湯は殆ど塩味を感じないのが鑑別のポイント。

 

浴感ですが、美肌の湯はやはり硫化水素イオンによる若干のツルツル感があるが、基本は塩類泉である事と、pHもそれほどアルカリに寄ってないので、まぁ多少ツルツルしてるって程度の浴感でした。これに対して癒しの湯は強い塩分がダイレクトに感じられるキマる湯で、濃い塩分で指の間がニュルニュルとしたり、肌自体にねっとりと張り付くような浴感がありました。

 

総合的には、浴槽が広く、湯を加温の上に少量フローしている美肌の湯は若干の湯疲れを感じるのに対し、小さな浴槽で加水&加温なしで提供される癒しの湯では後者の評価が高い。この辺の湯の使い方は、この施設が一定のこだわりを持って温泉を扱っている事を感じれましたね。

 

泉質自体も北海道内にしては炭酸水素イオンが少なく、硫酸塩が豊富な点も評価したい。北海道内ってなかなか硫酸塩泉がないのよ。ある意味貴重。

 

美食

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道の駅で食べた寿都ホッケ飯。新ご当地グルメって書いてあるから、町おこしの一環で考案されたメニューっぽいですね。蒲焼の様な味付けで、まぁ普通に美味い。セイコーマートのサンマ蒲焼重の上位版みたいな感じ。

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寿都の牡蠣、実は時期的にはもう終わりだった筈だが、漁協前のイートインにあった。

この時期の牡蠣は白子が乗ってクリーミーでウマイ。厚岸も牡蠣は春が旬だというので、春先から夏になる前位が丁度良いのだろう。

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バフンウニはこの時期、日本海側は稚内にかけてあちこちで採っているので、寿都でも食べてみましたが、かなーり美味かった。磯臭さも全くなく、上質で甘い口当たり。

1杯4000円しましたが、それでも積丹の相場に比べたら安いと思いました。

やっぱホッケとウニの勝負じゃウニが勝つわ・・・。

 

あと、本当は生シラスも有名なのですが、もう時期が終了したため食べられず。

機会があればそのうちチャレンジしたいですね・・・。