温泉は中高年の趣味か?
統計を取ったわけではないが、温泉という趣味は大抵の場合、若い人には受け入れられないという傾向があるのは誰しもが実感している所ではなかろうか。
一部の例外はあるのだろうが、何故若者は温泉に興味が無いのだろうか?
今回はそこに疑問を当てて考察してみる。
若年層はそもそも温泉を必要としていない。
温泉が何故中高年を魅了してやまないのか?という所にそもそもの問題。
これはもう中高年真っ盛りの自分が断言しても良いほどの確信的な仮説であるが、そもそも中高年は血流が悪いと云う事が全ての解に繋がる。
中高年は血流が悪いので、血流が良くなる温泉を必要としているのだ。
加温による血液の粘度低下に加え、ジャグジーなどは物理的に筋肉をマッサージするため、血流の悪化した中高年にはそれ自体が快楽となる。TNTNが勃起するのもそれ自体が血流が良いという証明でもあり、糖尿病を患うとこれが得られにくくなる。
これに対して、若くて未だ肥満の傾向も知らない若年層は血流改善という効果そのものを「体感」としての効果を知らない。もしも若年層でそれを知っていると云うのならば、恐らく限界まで身体を追い詰めている一部のアスリート位であろう。
人間はそもそも血管の拡張、或いは血流が良くなることにある種の快感を抱くようにできているのである。細胞の隅々まで栄養がいきわたるという事なのだから、さもありなん。血流が良いという事は身体全体の喜びでもあるのだ。
若者はそう言った視点から、身体のポテンシャルが高いという点で、温熱効果は血管拡張という恩恵が殆どなく、単に「熱い」という不快な点しか得られないというのも彼等が風呂を敬遠する理由の一つにあると考えられる。
毎晩の風呂にしても、若い内はシャワーだけでもいいけど、年重ねるといよいよシャワーだけだと本気で身体の疲れが取れなくなる。温泉に目覚めるきっかけはそうした身体的な老いを自覚するという所に直結していると云っても過言ではないかもしれない。
では若いとは一体何歳までなのか?
生活習慣の差もあるが、身体的に若いと言ってもそれはせいぜい25歳程度位までだろう。舌の味蕾細胞が変化して吉野家の紅ショウガの美味さに目覚めるのが二十歳前後として、その辺りからもう肉体の老いは始まっているのです。
直接的に身体的な老いが「疲れが抜けない」などの実感として出始めるの概ね20代後半からで、恐らく温泉などの効果を実感として自覚し始めるのはこの年齢層からだと思われる。
ちなみに、自分はそもそも温泉文化の殆どない県に生まれ育ったためか、大学時代に住んだ北海道で初めて温泉文化というものを知り、それ以来この温泉の虜になっているのである。きっかけは人それぞれなんだろうけど、肉体的な実感を改めて感じたのはやはり20代後半からです。とにかく温泉に入ると入らないとでは眠りの質が違う。
女性の間で岩盤浴が流行る訳
男女間の温熱効果を期待した入浴の流行という点では、男性はサウナ、女性は岩盤浴というイメージがある。
サウナは熱した石などから発せられる遠赤外線により皮膚表面付近の血管を拡張する作用が高いという作用に比して、岩盤浴や薬石浴は直接接触する石から赤外線が臓器深部まで届く事により身体の芯まで温めるといった効果が期待される。
入り方にもよるが、両者の効果を比べると熱の届き方に差があると私は自覚している。即ち、水風呂で皮膚が締まるのはサウナ浴だが、岩盤浴は水風呂でも締まってくれない。後者は血管が開きっぱなしになり、水風呂は単なる体温の喪失に過ぎなくなるのである。
水浴の温度変化に対して皮膚表面の血管が締まるか締まらないかの差は、血管平滑筋が過分極しているのかしてないのかによる。過分極とは筋肉が収縮する際に必要な電位の変化「脱分極」が一定時間以上持続し、平常に電位差が過剰に分極してしまった状態を指す。
血管平滑筋の電位が過分極を起こすと、温度変化に対しての血管収縮作用への対応が鈍麻してしまう。つまり、再び元の状態に戻る(再分極)までは筋肉は反応しなくなってしまい、これは筋肉疲労と同じ原理でもある。力を入れ続けた筋肉は一旦休息を得るまで再び同じ程度の収縮を得る事は出来なくなるのと同じで、脱分極を起こすには再び細胞内外のカルシウムイオンなどの勾配が元に戻り、電位が安定する必要があるからだ。
温熱効果を高めるには栄養も非常に大事。
拡張した血管に乗り、傾向で摂取した栄養は肌の隅々まで行き渡る。
何故岩盤浴は女性の間で流行っているのか?
この点については、まず女性は常に冷え性のリスクを抱えた生物であると云う事をまず念頭に入れる。というのも、女性は筋肉量が男性に対して少なく、熱を作り出す能力が男性に比して弱い。かつ、経血による失血から血流を確保するための素因子が弱いと云う事も化学的な理由にあると云えるだろう。
短時間とはいえ、過分極により血管が開きっぱなしになれば、それだけ多くの血液が身体の隅々まで行き渡る事になる。結果として女性たちは身体における末端部(特に皮膚付近)の栄養状態の改善を自覚し、体調の改善と同時に肌の張りが以前と全然違う事を自覚するのであろう。
好き嫌いをせず、何でもおいしく食べる事が美肌への近道。
女性こそ牡蠣を食え!牡蠣を!!
岩盤浴が流行る背景には、そうした女性が抱えた生物学的な温熱効果への恩恵の差があると云っても過言ではない。血液というのは究極の栄養でもあり、熱源でもある。毎月それを失うという身体的なリスクが、彼女らを実証的に岩盤浴への理解に繋げているのかもしれない。
老いを知る事で自覚できる温熱効果
立ち仕事をしている人には特に実感しやすいかもしれない。
深さのある温泉の立位浴は足の浮腫みに劇的な改善効果がある。
水圧による物理的な引き締め効果が挙げられるが、とにかく全身が温まって血管が開くという事は、脚に溜まっている筈の血が他所に行っているという他ならない証拠なのである。
自分自身毎年実感している事であるが、温泉から得られる快感は年々度合いを増しています。年齢を重ねるにつれて自分の身体は日々血流が悪くなっていっています。同じ立ち仕事をしても、帰宅後に現れる足の浮腫みや、風呂に入らずに寝落ちしてしまった翌日の疲れなどは20代の比ではありません。
人間は神の理(ことわり)により、年齢を重ねるごとに自らの肉体に抱え込んだカロリーを上手く自分の身体の還元しにくくなっていってしまう生き物なのです。運動する事や食事の改善でいくらかの抗いは出来るでしょうが、最も手っ取り早くその効果を得る方法、それ風呂であり、サウナであり、岩盤浴であり、温泉なのであります。
温泉が中高年の趣味であるという事には、ある種の必然的な因果関係があるのだ。