温泉美食倶楽部活動報告書

温泉の成分分析表に興味ある人向け

72・池田ラジウム鉱泉・放泉閣

温泉

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源泉は旅館の直ぐ傍から湧出している。

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源泉は冷たいため、湧き水のようにしか見えないが、屈指のラジウム濃度を誇る。

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浴槽は追い炊き方式。水の代わりに源泉を足して冷却する。

 

成分分析書

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放射能に関する数値が無いが、この三号泉ともう一つ八号泉が高濃度のラジウムを含有しており、日本でも屈指の効能を有しているとされる。

(八号泉も一応見たけど、八号井窟は蚊が多くて即退散した)

 

概要

日本で最強の酸性泉は草津の香草温泉か、浴用施設としては秋田の玉川温泉だろう。

アルカリ性泉では埼玉にある都幾川温泉か、長野の白馬八方温泉が該当する。

では最強の放射能泉は一体何処なのだろう?

 

これに関しては諸説あるのだが、関東では増冨ラジウム鉱泉

そして関西圏でその名が知れ渡っているのが、この池田ラジウム鉱泉である。

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まー遠いですわ。広島からレンタカーで約2時間。

三瓶山の麓にある秘湯中の秘湯。

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実はこの辺り、山陰のたたら遺跡からも判るように、非常に鉄が取れる所です。

このような赤茶けた析出物は、この温泉に限らず中国山地の湧水などではよく見られる特徴です。

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実は旅館に立ち寄る前に石見銀山を見て来ました。

世界遺産としてエンターテイメント性のある遺構ではありませんが、石見銀山は日本で最も古い鉱山であり、当時の世界の銀の殆どを生産していました。

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手積の石段が特徴的な神社。この神社もかつては両側に家が建って、人でにぎわっていたのだとか。

実はまだ深部まで掘れば銀は出るそうですが、リスクの方がでかそうですね・・・。

 

色々と見聞きして解った事ですが、この辺りの地質はどうも他の温泉地とは一味違うらしい。というのも、同じ鉱山でも土肥金山などは採掘中に温泉がバカスカ湧き出た経緯があります。しかし、石見銀山では水は出ても温泉は出ていない・・・。

やはりこの中国山地は殆ど地熱の無い所らしい。そして、先程の源泉の写真からも解る通り、かなりミネラル(というか金属)を多く含んだ地質のようです。

 

ヤマタノオロチ伝説では、須佐之男命が退治したオロチの尻尾から固い剣が出てきて、それが現在に続く天皇家三種の神器草薙剣(アメノムラクモの剣)となるわけですが、山陰で云うオロチとは水=川を指し、その川から取れた砂鉄で作られたのがこの伝説の剣だと云われています。

要するに、須佐之男命がこの出雲の国を開拓し、治水工事を施して製鉄業を興したと考えれば合点の行く話になりますね。

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良い時代の銀で作った江戸時代の銀銭。

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水は出るが湯は出なかった模様。

 

鉱脈と温泉の泉質にどのような因果関係があるのかは判りませんが、地熱の少ないこの地域ではもっぱら炭酸泉が出るようです。少し上に載せた源泉に手を付けた写真をよく見てもらうと、指にはもう泡が立ち始めているのが分かります。

放射能泉であると同時に、ここ池田ラジウム鉱泉積丹のシララ温泉と同程度の炭酸泉でもありました。

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これは旅館の直ぐ脇にあった源泉を溜めておく湯貯めのようですが、液面に張っている白い膜は有機物ではなく、析出したカルシウムの塩でした。たまげたなぁ。

 

成分分析書にもリチウムだの様々なミネラルの存在が記されているので、そりゃラジウム鉱脈があっても不思議じゃないよなぁ。中国山地にはウラン鉱脈もあるので、温泉目当てでヤタラメッタラ掘ると痛い目を見そうですね・・・。

 

総評

今回は温度調整の利く風呂で、しかも貸切状態でした。

かつ冷鉱泉が源泉という事で、かなり温めのお湯に調整して長湯を堪能させてもらいました。

お湯自体の刺激は酸性泉のような強さはないが、炭酸泉特有のチリチリとした刺激が印象的。長湯になる為、最初は冷たいかなー?と感じた湯が徐々に火照って心地よくなっていきます。この微妙な火照りは炭酸のせいなのか、それとも放射能のせいなのかは判りませんが、浴後は結構汗が吹き出しました。

 

とはいえ、放射能泉の活用の仕方としてはやはり増冨ラジウムの不老閣や金泉閣が一歩先を行っているイメージです。あそこは源泉をプールして使ってないため、湧き出た直後の湯に入浴する事になります。そして温泉入浴指導員が常駐し、適切な入浴方法を指導してくれます。

 

まぁ施設の規模とかその土地の人々の風呂に対する感覚の違いもあるのですが、放射能泉を活かすにはやはり追い炊き方式ではなく、浴槽は白湯と源泉に分け、源泉は常時湧水地から直に放流しておくべきかと思われます。

ラジウムは非常に不安定な元素で、湧き出たあとは直ぐに壊変して散ってしまうからです。

 

個人的に、スペック上の数字を抜きにして今回の経験から考察してみると・・・放射能泉としてのポテンシャルの高さはやはり増冨ラジウムに軍配を上げたいところです。最強はやはり湧水池に直に入れる不老閣かと。

 

まぁ、やはり何事も入りに来なくては解りませんね。

もちろん、ここはここで温泉としてのポテンシャルは高いので、秘湯マニアの人々には引き続き入りに来ていただきたいですね。

 

美食

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道の駅みずほで食べたつけ麺。

つけ麺は夏季限定品らしいですが、喜多方ラーメンに近いあっさりとした風味。

北海道では見ないタイプのラーメンでしたね・・・。